café Rogersに
いたるまで vol.3
こんにちは、管理人のU2です。
前回の続きとしてvol.3をお届けいたします。
「ほんものの傾聴」について考える
心理学者の諸富祥彦氏が「ほんものの傾聴を学ぶ」という本を出しています。
氏のカウンセリングにおける理論的支柱となるのがカール・ロジャーズです。
ロジャーズと言えば、個人的に「受容・共感・一致」が真っ先に頭に浮かぶキーワードなので、抜き書きした氏の解説をもとにcafé Rodgersの活動意義を考えてみたいと思います。
1.無条件の積極的関心(受容)
諸富祥彦「ほんものの傾聴を学ぶ」
カウンセラーの価値観や好みによって取捨選択せず、クライアントのこころのどの側面をも「あぁ、そんな気持ちがおありなんですね・・・」と、ただそのまま受け止めていくことです。
「あなたは今のままで素晴らしいですよ」と肯定することではありません。カウンセリングでは原則的に、相手をほめることも、叱ることもしません。「そうですね」と相手に同意したり、反省したりもしません。〇もつけず、×もつけず、「ただ、そのまま、受け止めていく」のです。
実践的には、カウンセラーが自分のこころの中に「空間」をつくり、その「空間」の中を、あたかもクライアントに自由に漂ってもらうことができているような、そんな心理的態度のことを言うんだと考えてもいいでしょう。
金田和尚は、傾聴の基本は答えは出さないこと、物語が動き始めるまでじっと待つ、ひたすら待つ、と言います。震災で被災した人たちは、大切な人との別れや家屋・仕事の消失等、被災していない人にとって想像もつかない大きな悲嘆の中でもがき苦しんでいます。それをただ受け止め続けていくことは、傾聴する側には計り知れないダメージが蓄積されるように思います。
キャリアコンサルタントの行う傾聴は、限られた時間内でクライアントに進むべきキャリアのヒントを掴んで欲しいとの目的がありますので、受容ばかりに時間をとってもいられません。
よって結局は、現在社会における効率性やスピード重視の流れに抗うこともできず、表面的な相談行為にしかなりません。それだけでは、café Rodgersが用意するコンテンツとして相応しくないように思えます。
「一致」という高い目標を目指して
2.共感的理解
諸富祥彦「ほんものの傾聴を学ぶ」
クライアントの私的な世界を、その微妙なニュアンスに至るまで、あたかもその人自身になったかのような姿勢で、「あなたがいま、感じていることは、〇〇ということでしょうか」と正確かつていねいに、伝え返し、確かめていくことです。
(中略)
実践的には、クライアントがまさに言わんとしている、その「感じ」の「エッセンス」を感じとり、「あなたが今、おっしゃていることは・・・ということでしょうか」と、クライアントが感じているまさにその同じ次元で踏みとどまりながら、クライアント自身の内側に身を置きつつ、ていねいに、ていねいに、「クライアントが言わんとしていることを、確かめつつ、確かめつつ、ともに歩んでいくような姿勢を」保ち続けることです。
ありがちなのは同感と共感を混同することです。それは、グリ研のグループワークでもよく見た光景でした。
数人のグループが輪になって、あるテーマにのっとり相互に話をしたり聴いたりするグループワークですが、話を聴いてどう感じたか自分の”気持ち”を話し手に伝える時間帯があります。具体的には、色やモノやイメージやメタファーなどで自分の気持ちを表現し伝えるのですが、きっとはたから見ていると摩訶不思議なやりとりに見えることでしょう。
「感じ方」を「考えかた」と勘違いするメンバーもいましたが、振りかえるとどのグループワークも新鮮でしたし、難解でしたし、時として感動的である貴重な体験の数々でした。「気持ち」という、みえないものをみえるようにことばとして表現することは、相手を傷つけてしまうかも知れない恐れが常につきまとい緊張の連続でもありました。
諸富氏記載の”「感じ」の「エッセンス」を感じとり”、というのは、頭で聴くのではなく身体全体をつかって聴くことで得られるものではないかと考えています。そのためには相手のノンバーバルから片時も目を離さずに、聴覚・嗅覚・味覚等をフルに駆使して相手の話を味わうことも必要になるのでしょう。これは、オンラインによる傾聴喫茶を開く上でおおきな課題といえます。
3.一致
諸富祥彦「ほんものの傾聴を学ぶ」
カウンセラーは、①自分の心を空にして、クライアントのこころのひだをていねいに聴いていくと同時に、②クライアントの視点に立って、そのこころの中に深く沈潜していくとき、同時に自分自身のこころの深いところで発せられてくるさまざまなこころの声や動きにていねいにに意識を向けて、耳を澄ませていく、という二つのことを同時進行で進めていきます。
これが最も大切で難しい技法となり、私は未熟なので話し手にそこまで期待されても無理があります。ただ、café Rodgersにとって必要な取り組みとなれば、チャレンジしていくことになるでしょう。
身の丈にあったオンライン傾聴caféをサービスの一つとして検討するにあたり、caféで話したいと思っていただける皆さんに、受容・共感までは提供できることを目指したいと思います。そして、普段は受容・共感してもらえる機会の少ない人たちが、気軽に集い愚痴を言い合うことで活力が得られる場となれば良いなと願っています。
café Rodgers(カフェ ロジャーズ)
ということで、オンライン傾聴喫茶を開いてみたいとの思いにいたりました。
金田さんのようなウイットに富んだネーミングは難しいですが、堅苦しい言葉も避けたいです。
しかし、目指すところはぶれずにいたいので、常に初心に帰れるようロジャーズの名を冠することにしました。
私が自分自身を受け入れて、自分自身にやさしく耳を傾けることができる時、そして自分自身になることができる時、私はよりよく生きることができるようです。・・・言い換えると、私が自分に、あるがままの自分でいさせてあげることができる時、私は、よりよく生きることができるのです。」(Rogers,1963)
諸富祥彦「カールロジャーズ入門 自分が”自分”になるということ」
café Rodgersは、集う人のためでもあり私のためでもあります。
(おわり)
この記事を書いた人
BARISTA
café Rodgersの企画・運営をしています。対話のことを中心に、不定期ですが投稿しています。「第三の語る場」が世の中に喜んでもらえるよう頑張ります。